本研究では正常ヒト骨格筋細胞膜ジストロフィン分子を急速凍結、ディ-プエッチング、回転蒸着、レプリカ法にて観察することを目的としたものである。6例の正常対照ヒト大腿四頭筋生検筋と6例のDuchenneジストロフィ-生検大腿四頭筋を冷却4%パラフォルムアルデヒド溶液で2時間固定後よく洗浄してクリオスタットで標本を細切後、液体ヘリウムで急速凍結し、凍結割断装置にて試料の凍結面表層を割断しディ-プエッチング後プラチナとカ-ボンを回転蒸着しレプリカ膜を作製した。これを電顕的に観察すると、レプリカ膜の良否は筋原線維の低倍及び高倍の写真で容易に判定可能であった。氷晶などによる人工産物の少ないレプリカ膜では筋原線維は整然と配列し、高倍像ではmyosin cross bridgeやactin filamentでは約5nmの周期をもつ縞紋様構造が観察された。ところで筋細胞への割断面の入り方でレプリカ膜で観察される部位が異なる。大別すると2種類あるが、その1つは割断面が細胞外腔、筋細胞の基底膜から細胞膜の真表面、細胞膜疎水性の内部を通り細胞膜直下から細胞質内部へて抜けるものである。この場合筋細胞膜割断面のP面とそれに関連する細胞骨格がみられた。他の1つは割断面が筋細胞内部から細胞膜直下を通り筋細胞膜内表面、細胞膜の疎水性内部から基底膜、筋細胞外腔へと進むものである。この場合は筋細胞膜E面、筋細胞膜真内表面とこれに付着するジストロフィンを含む筋細胞膜関連細胞骨格が網目構造を形成しているのが観察された。筋細胞膜関連細胞骨格の形態はおおむね桿状であるが、不規則な太さのものやcurveしたものが多く、なかに他端に向かって細くなっているもの、一端又は両端がやや拡大したものなどもみられた。一方Duchenneジストロフィ-症筋の筋細胞膜関連細胞骨格も正常骨格筋細胞膜のそれと大きな変化はなくおおむね桿状であり、不規則な太さのものやcurveしたものが多かった。
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