研究概要 |
神経系、とくに末梢神経の再生機構とtrophic factorの関係をin vitroとin vivoにおいて検討した。In vivoについてはマウスの坐骨神経で挫滅モデルを作成し、昨年に引き続き挫滅遠位部のNGF receptor,laminin A,B1,B2 subunit,type4.collagenとさらにmerrosinのmRNAの発現レベルを各々に対するcDNA probeを利用してをNorthern blott hibridizationを行い測定した。同時にβactin mRNA量を測定し、それに対する比率として発現レベルを表現した。NGF receptorはcrush後挫滅遠位部で著明に増加し、挫滅7日目以後には再び減少した。一方laminin B1 B2 chainとtype4.collagen mRNAは挫滅後急速に減少し、14日目位から増加し、21日目にはほぼ正常範囲に復した。さらにmerrosinもほぼ同様の変動態度を示した。形態的には挫滅遠位部で挫滅後7日目位から再生軸索とremyelinationが観察された。上記の各mRNAの変動の調節因子は種々のものが考えられるが、神経軸索の再生過程と対応してそのレベルが変動しており、おそらくSchwann細胞と軸索とのcontactが重要な因子の1つであると考えられる。 一方in vivoについてはSchwann細胞のNGF,BDNF,NTー3などの神経成長栄養因子の産生とその調節を検討した。生後2〜3日目のSchwann細胞を培養し、NGF,BDNF,NTー3,mRNAレベルをNothernーblot hibrizationによって検討した。培養3日後のSchwann細胞ではNGF,NTー3,mRNAはいづれも検出可能なレベルでありいづれもSchwann細胞により産生されることが明らかである。しかしその産生レベルは3者間で異なっておりNGFが最も高くBDNF,NTー3の順であった。とくにNTー3は極めて低いレベルにとどまった。さらに今後この産生レベルの調節因子としてのcAMP,neuronal contactなどの意義についても検討したい。
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