1)心室筋の異方向性伝導の特徴 心筋の伝導速度は心筋線維束の長軸方向が速く線維束の垂直方向が遅い。これは垂直方向が長軸方向に比して心筋線維間の結合が疎であるためという。当初24点の心表面マップ電極による異方向性伝導測定から48点のマップ電極が使用可能となり測定精度は向上した。イヌ左室前面の長軸方向の伝導束度θLは0.60±0.11m/s、垂直方向θTは0.42±0.04m/sで異方向性伝導指標θL/θTは1.43±0.01であった。 2)急性心筋虚血の心筋異方向性伝導への作用 前下行枝の結紮による急性虚血によりθLは0.40±0.09m/s、θTは0.25±0.06m/sに減少した。減少率はθLの33.5%に比しθTが40.2%と大で異方向性伝導指標θL/θTは1.63±0.21に増大した。したがって急性虚血による心筋伝導速度の低下には従来報告されている心筋細胞のVmaxの抑制に代表される能動特性の変化だけでなく、細胞間の受動特性の変化(gap juntionの抵抗増大)の関与も示唆され、興味がもたれる。 3)Digitalis中毒の心筋異方向性伝導への作用 Digitalis 中毒の際に認められる難治性の心室頻拍、細動の機序を異方向性の変化から検討した。Digialis中毒によりθLは有意な変化を示さずθTのみが有意に減少しθL/θTは有意に増大した。これはdigitーalisによる過度の細胞内Caの増大によるgap junctionの抵抗増大の関与を示唆する。
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