イヌの左室心表面マッピングを用い、急性虚血時の左室心筋異方向性伝導の変化と、急性虚血早期における心室細動発生への異方向性伝導の関与について検討した。雑種成犬13頭を麻酔後開胸。電極間2mmの双極電極を5mm間隔で48点配列したマップ電極(25×35mm)を、6頭は左室前壁、7頭は左室後壁に装着し、それぞれ左前下行枝、回旋枝結紮前と後1分ごとにフクダHPM7100で、マップ電極中央の刺激(周期長300ms)による等時線図を作成した。虚血前より心筋線維長軸方向の伝導速度(θ_L)は垂直方向(θ_T)より大であり異方向性伝導が認められた。左室前壁、後壁いずれにおいても、急性虚血によりθ_L、θ_Tは低下するが、その程度はθ_Tでより大であり、θ_<L/T>は前壁、後壁とも同様に増大し、異方向性伝導が増強した。 前壁の虚血で4回、後壁の虚血で2回、冠閉塞7分以内に心室細動が生じたが、機能的ブロックが長軸方向に出現し垂直方向の遅い伝導を介しリエントリーが形成される部位が認められ、これらが一拍毎に変化した。この機能的ブロックと興奮の旋回に、急性虚血による異方向性伝導の増強が関与すると考えられた。
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