(1)イヌ心室筋異方向性伝導の部位による特徴。右室前壁、左室前壁、左室後壁で異方向性伝導の程度を測定した。電極間2mmの双極電極を5mm間隔で48点配列したマップ電極を心表面に密着させ電極板中央より刺激し等時線を作成した。左室後壁は心筋線維長軸方向の伝導速度θ_L=0.60±0.10(m/s)、短軸方向の伝導速度θ_r=0.39±0.09で異方向性伝導の指標θ_<L/T>=1.59±0.16であった。左室前壁はθ_L=0.55±0.09、θ_r=0.28±0.02、θ_<L/T>=1.93±0.34であった。右室前壁は両者の中間のθ_<L/T>=1.85±0.24、θ_L=0.62±0.07、θ_r=0.34±0.07を呈した。 (2)急性虚血の心筋異方向性伝導に対する効果。左室前壁では前下行枝を、左室後壁では回旋枝をそれぞれ結紮し異方向性伝導の変化を測定した。左室前壁ではθ_L=0.51±0.10、θ_r=0.23±0.03と減少、θ_<L/T>=2.22±0.42と増大した。左室後壁ではθ_L=0.52±0.10、θ_r=0.28±0.08、θ_<L/T>=1.92±0.28と増大したが前壁と後壁の間で有意差はなかった。 (3)ジギタリスの心筋異方向性伝導に対する作用。Deslanosideによりθ_Lは有意な変化を示さなかったがθ_rは左室前壁で0.26±0.08右室前壁で0.24±0.05と減少した。θ_<L/T>は左室で2.52±0.68、右室で2.57±0.70と増大した。Deslanosideによるtriggered activity出現前より異方向性伝導の増強を認めジギタリス中毒時の心室不整脈発生への関与が示唆された。 (4)急性虚血時の心室細動発生と心筋異方向性伝導の関係。冠閉塞7分以内に前壁で4回、後壁で2回心室細動が生じた。機能的ブロックが長軸方向に出現し垂直方向の遅い伝導を介しリエントリーが形成される部位が認められ異方向性伝導が関与が示唆された。 (5)心房細動発生における心房不応期とその不均一性の関係を検討し、心房受攻性亢進に両者が関与することを明らかとした。
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