研究概要 |
1.虚血類似液潅流前後の心室筋活動電位変化.a)再潅流後の活動電位変化は,代謝抑制の強さによって影響され,高度で短時間の代謝抑制後再潅流を行った場合,コントロ-ルに比し延長する現象を観察し得た。 b)再潅流後の活動電位持続時間の延長は,代謝抑制の時間に比し長い時間経過で生じ,コントロ-ルに比し10〜25%の範囲で延長する。 c)再潅流後の活動電位の延長に伴い,活動電位の高さ,dv/dtmaxも増強する。 d)現在a)〜c)で述べた生理現象の生理的原因を追及する目的で,種々の薬剤(ca拮抗剤,リアノジン,グリベンクラマイド,COQ_<10>,ATP,他)を用い,現象の背景となっている代謝の変化に伴うイオン電流の変化につき解明中である。 2.シミュレ-ションモデル,a)左室側壁梗塞のモデルを作製し,さらに梗塞の形状を心外膜側が心内膜側に比し広い形状を有するモデルと,逆に心内膜側に広い梗塞巣を有する梗塞の二種類の梗塞モデルを作製した。 b)1項で述べた実験結果をもとに,梗塞部,梗塞境界部の活動電位の形をシミュレ-ションモデルの各ユニットに設定し,人臨床にて観察される心電図変化が得られる条件を検討した。 c)心外膜側に広い梗塞モデルでは,梗塞境界部の活動電位を梗塞巣に近い部位にて20〜25%延長させると,臨床心電図にみられる冠性T波が得られ,一方心内膜側に広い梗塞モデルの場合は,梗塞境界部の活動電位を梗塞近位で40%短縮し中央部で25〜30%延長させると冠性T波に類似した波形が得られることが判明した。 d)今後のシミュレ-ションモデルを用いた検討として,中隔梗塞,または前壁中隔梗塞モデルを作製し,冠性T波の成立機序を考えること,梗塞境界部の伝導時間の遅延とT波の成立の問題を検討することにより,冠性T波の成立に関与する二次性の要素を一次性の要素に加えて検討し,その臨床的意義を明らかにする計画である。
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