研究概要 |
慢性活動性EBウイルス感染症は、EBウイルスに対する特異的免疫不全症と考えられているが、本邦における実態は明らかではなく、その病因、病態に不明な点が多い。まず本症の実態を把握する目的でアンケ-ト調査を行い、回答の得られた37例につき検討した。その結果18例が数年以内に死亡するという、極めて予後不良の疾患であることが判明した。代表的死因としては肝、心不全(10例),悪性リンパ腫(2例),日和見感染症(2例),その他(4例)であった。一方欧米で報告されているXーlinked lymphoproliferative syndrome(XLP)とは異なり、本邦例では明らかな遺伝的背景はなく、またATLのような地域集積性はみられなかった。興味深いことは、5例に顆粒リンパ球増多症(LDGL)がみられ、検策したり症例は全てEBウイルスゲノムを有するNK細胞増多症であった。本症に対しては確立された治療法がなく、ILー2,IFN,ステロイド剤、jーgl製剤,acycloviaなどが用いられてきた。我々はILー2を中心とした治療で部分寛解にはなったが、hyersplenismが持続する2症例でsplenectomyを施行し、肝機能をはじめとして全身状態の著しい改善をみた。摘出されたspleenのcell suspensionを調べると、その70〜80%がNK細胞であり、しかもこれらにEBウイルスゲノムが認められた。本症の特徴的所見のひとつであるsplenomegalyが、spleenでのNK細胞の増殖に起因するのか否かに関しては、今後の多数例での検討結果を待たねばならないが、本疾患でのNK細胞増殖の場がspleenであり、それが無秩序に行われている可能性を示唆するものであろう。このようなsplenectomyをはじめとした包括的な治療大系の確立と病因,病態のさらなる解明が今後の課題である。
|