研究概要 |
マクロファ-ジを用いた泡沫細胞の作製法、泡沫細胞を使ったコレステロ-ル逆転送の分析法を確立し、アポAーI含有リポ蛋白(AーILp)の影響を検討した。アポAーI含有リポ蛋白は更に抗体カラムを用いてアポAーIのみから成るLpAーIとアポAーI及びアポAーIIから成るLp AーI/AーIIとに細分画した。これまでの超遠心分離したHDLを用いた研究では泡沫細胞からのコレステロ-ル引き抜き作用は主にコレステロ-ルエステル(CB)減少作用であり、細胞内のフリ-コレステロ-ル(FC)はむしろやや増加する傾向にあった。また、培養液中のコレステロ-ルは全てFCと報告されていた。私達は本研究でLpAーI及びLpAーI/AーII共に泡沫細胞からCEを減少させ得る事、更にLpAーIはFC減少作用も有する事を明らかにした。結果として泡沫細胞からの総コレステロ-ル引き抜き作用はLpAーIのみで観察された。また培養液中のコレステロ-ルの検討ではLpAーI存在下では40%,LpAーI/AーII存在下では17%がエステル型であった。この事実は超遠心分離中にHDLからFCをエステル化する酵素lecithin:cholesterol acyltransferase(LCAT)が失われる事を示しており、また、我々のリポ蛋白間の機能の違いはLCAT活性の差による事を示唆している。このように従来の方法で分離されたHDLは生体内でのHDLと構造及び機能の両面で異なっているため、今後HDLの機能の研究には超遠心法に代え、抗体カラムを用いてHDLを自然の状態で分離すべきであろう。 以上の結果より、泡沫細胞からのコレステロ-ル引き抜き作用が、2つの独立した機構成ること(HDLレセプタ-を介したCE減少機構及びLCAT活性を介したFC減少機構)を平成2年度の研究で明らかにした。
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