研究概要 |
WKYラット269匹の胎仔と新生仔を調べた。肺動脈弁異形成(PVD)は21日の胎仔と2日の新生仔で約50%に生じた。心室中隔欠損(VSD)は17日の胎仔の52%,19日に39%,21日に18%,2ー4日の新生仔13%に認められた。新生仔のVSDには膜性の結合組織が付着することが多く時に完全な閉鎖を示した。漏斗部の狭小化は21日胎仔と新生仔の55%にあり,室上稜の前方偏位およびParietal bandとSeptal bandの発達が顕著であった。また。肺動脈分板の壁肥厚がVSDなしで21日胎仔の19%,新生仔の14%に認められ,ヒト新生児肺高血圧症との類似を示した。胎仔心の約80%で心室中隔の中層線維は,正常の心におけるのと異って右室壁との連続を示した。この異常連続は生後に左室壁との正常な連続を達成することに困難があり,錯綜配列を残すと考えられる。さらに,4匹にDouble aortic arch,6匹にright aortic archが存在した。 以上の病変のどれか、とくに顕著なものが存在する時,動脈管は明瞭な低形成を示した。胎仔動脈管の狭窄は右側心血管系の圧負荷をもたらすとされており,右心室の圧上昇は右→左短絡流を生ぜしめ,その機械的刺激により中隔膜性部の正常な閉鎖を障害し,VSDを残す可能性がある。正常胎仔循環では左右の心室圧はほぼ同じとされ,大きい短絡流は生じないと考えられる。また肺動脈幹の圧上昇は弁閉鎖の機械的刺激を増大させ右側二弁の肥厚変形をもたらしうる。これらの弁は発生過程にあるため可塑性に富み,この刺激の影響を受けやすいと考えられる。さらに,この圧負荷は,胎仔の肺動脈分枝の壁肥厚ならびに右室圧発生に有利な中隔中層線維の右室壁との連続をもたらすと考えられる。 WKYラット心血管系常の中核病変は,そういうわけで,動脈管の低形成にあると考えられる。この低形成は大動脈弓の異常と共にAortic arch systemの発生異常に由来することが示唆される。
|