研究概要 |
研究実績は以下の三項目からなる. (1)WKYラットの胎仔及び新生仔計269画を検索した。肺動脈弁異常形成(PVD)、大動脈の騎乗を伴う心室中隔欠損(VSD)、右室漏斗部狭官、およびVSDなしの肺動脈壁肥厚が単独又は合併して約20〜50%に認められ、更に全体の約80%のラットが肥大型心筋症(HCM)に進展すると思われる心筋線維の構築異常を示した。胎仔の約80%が動脈管の低形成を示し、特にPVD,VSD,PHが存在する時に高度であった。動脈管の低形成は胎仔循環において右心系の圧負荷となり、その機械的刺激により、詰〓形病変の発生に関与すると推察される。 (2)正常ラットとの変配実験について:弁の変形を伴う高度のPVDとVSDのF_1の発現は1%以下であったが、F_2及びF_1とWKYとの戻し交配においては雌雄基にWKYの1/8〜1/3の頻度を発現し、浸透率の低し常染色体劣性の遺伝形成が示唆された。他の病変はF_1においてWKYの約1/2の頻度で発現し浸透率の低い不完全優位の遺伝が示唆された。なお、動脈管の低形成は全ての交配グル-プで定量的に連続して分布し、ポリジ-ンの関与の可能性を示した。染色体異常は認められなかった。 (3)心エコ-・心カテ-テル検査:心室壁厚・壁運動・心拍出量・心内圧曲線の記録に成功した。PVD,VSD,HCMを有するWKY心では特有の異常所見が明瞭に示された。特にHCMと診断されたのは心筋中隔の非対称性胞厚・運動低下・心筋収縮胞及び拡張態の低下を明瞭に示し、ヒトHCMとのより強い類似性が確認された。今後、ヒト先天性心疾患モデルとして病態の解明に一層強く貢献することが期待される。
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