研究概要 |
1.IgA腎炎患者の血清中IgAとヤギIgGとの親和性について。 IgA腎炎患者の血中には,IgAーfibronectin複合体が存在するとCederholmらは先に報告しているが,我々はこの複合体をELISA法(ヤギ抗fibronectin抗体とヤギ抗ヒトIgA抗体とのサイドイッチ法による)にて測定していく過程で,IgA腎炎患者の血清中IgAは、正常ヤギIgGに親和性を有することを見出した。現在,ヤギIgGのビの分画(FCかFabか)との親和性であるのか,また,IgA患者の腎組織に沈着しているIgAにも同じような性質があるか否かについて検討中である。 2.IgA腎炎における凝固線溶系の関与について. IgA腎炎患者の腎生検組織を安定化フィブリン,tissue typeプラスミノ-ゲン アクチベ-タ-(tーPA),プラスミノ-ゲン アクチベ-タ- インヒビタ-1(DAIー1)に対する各抗体にて染色し,蛍光抗体法,免疫電顕で観察したところ,糸球体へのフィブリンの沈着がしばしば認められ,線溶活性化因子であるtPAの染色性もそれに関連して増強していることが明らかになった。また、tーPAの阻害因子であるPAIー1は主として、糸球体の上皮細胞に存在していた。 3.糸球体障害と間質型(I型,III型)コラ-ゲンについて I型,III型コラ-ゲンに対する抗体での染色で,メサンギウム基質の増加している糸球体や半月体内,硝子化糸球体内にこれらコラ-ゲンの存在が認められた。また、同じ部位にコラ-ゲン合成酵素であるプロリン水酸化酵素の発現も増強していた。これらの成績は,正常系球体には存在しない間質型コラ-ゲンが,糸球体障害の過程で糸球体細胞によって合成されることを示唆している。
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