本研究は、生体の骨格筋の持つ構造・機能を模倣した、従来の油圧機構や電気モ-タに代わる、新しいアクチュエ-タを用いて機能性義手の開発を行なおうとするものである。素材として熱を直接力学的エネルギ-に変換可能、滑らかな動きをする柔軟性、動作音がないという静粛性などの特徴を備えた形状記憶合金(以下SMAと略す)を用い、構造としては、先ず生体骨格筋と同様に収縮の最小単位であるサルコメアを真似て人工サルコメアをつくり、これを直・並列に組み合わせた人工筋肉と呼ぶアクチュエ-タを構成する。また、再変形力を得るためには従来はバネなどを用いていたが、我々は拮抗筋構造としている。さらに、この人工筋肉をヒト骨格に装着し、従来のロボットにみられるような、単純な1自由度の関節運動ではなく、ヒトと同様の自由度(場合によっては制限もあるが)を持つ義手を開発しようとするものである。 本年度では(1)拮抗筋構造の新しい人工筋肉の完成を目指し、(1)形状記憶合金(SMA)人工サルコメアを用いた、ヒト骨格寸法に合う拮抗筋構造を持つ新しい人工筋肉の設計(2)拮抗筋構造をもつ新しい人工筋肉の製作(3)新しい人工筋肉の機能試験を行なった。また、(2)力の制御の実現を目指し、一般のロボットには現在用いられていないが、機能性義手として是非とも必要と考えられる、圧力センサ-を用いて、グリッパといえる人工手における力の制御を実現を行なった。いずれも初期の計画通りの成果が得られつつある。 また、初期の目的にはないが、これらの設計に欠かせない運動力学的解析を併せて行なっており、この成果も得られつつある。 次年度はヒト骨格(模型)を用意し、これに人工筋肉(複数個)を組み込んだ機能性義手の作製を行なう予定である。
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