人工筋肉とヒト骨格による機能性義手の研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02807110
• 研究機関: 長岡技術科学大学
• 研究代表者: 三宅 仁 長岡技術科学大学, 体育保健センター, 助教授 (10143819)
• 研究分担者: 池谷 光栄 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (90115098)
• キーワード: 機能性義手 / 形状記憶合金 / 人工サルコメア / 人工筋肉 / ヒト骨格 / 運動力学的解析 / 収縮特性方程式 / 動的シミュレ-ション

研究概要

本研究は、生体の骨格筋の持つ構造・機能を模放した、従来の油圧機構や電気モ-タに代わる、新しいアクチュエ-タを用いて機能性義手の開発を行なおうとするものであった。素材として熱を直接力学的エネルギ-に変換可能、滑らかな動きをする柔軟性、動作音がないという静粛性などの特徴を備えた形状記憶合金を用い、構造としては、先ず生体骨格筋と同様に収縮の最小単位であるサルコメアを真似て人工サルコメアをつくり、これを直・並列に組み合わせた人工筋肉と呼ぶアクチュエ-タを構成した。また、再変形力を得るためには従来はバネなどを用いていたが、我々は拮抗筋構造とした。さらに、この人工筋肉をヒト骨格に適用し、従来型のロボットとは異なった、ヒトの形態・機能にできるだけ近づけた義手を開発しようとした。
本年度(最終年度)においては、初期の目的にはなかったが、マニピュレ-タの設計には運動力学的解析が必要とわかり、新たにこれを用いた設計法を開発した。すなわち、我々の開発した人工筋肉の特性を調べたところ、生体骨格筋と全く同様の特性方程式で表現可能であることがわかった。したがってこの特性方程式を導入した動的シミュレ-ションを行ない、さらに目的に応じて容易に設計変更が可能な設計方法を確立することとした。実際には、ヒト前腕の解剖学的特徴を取り入れたマニピュレ-タ骨格および関節からなるフレ-ムに人工筋肉を取り付けたモデルを考え、コンピュ-タシミュレ-ションを行なった。これによって、人工筋肉の取り付け位置によるさまざまな負荷の影響に対する対策が容易となった。このようにしてマニピュレ-タの設計を行ない、製作を行なった。できあがったマニピュレ-タでの結果は、シミュレ-ションの結果と10%以下の誤差であることを確認した。

研究成果

• [文献書誌] 三宅 仁: "形状記憶合金人工筋肉を用いたマニピュレ-タとグリッパ" 人工臓器. 19. 1114-1117 (1990)
• [文献書誌] H.Miyake: "BioーMimetic Shape Memory Alloy Artificial Muscle" Artificial Organs. 14. 299-303 (1990)
• [文献書誌] 三宅 仁: "形状記憶合金人工筋肉による人工腕の開発" 人工臓器. 20. 478-482 (1991)
• [文献書誌] 中野,張,小林,大沢,若林,池谷,三宅: "生体骨格筋収縮特性を有する内骨格型 人工筋肉マニピュレ-タの設計と試作" 信学技報. MBE91. 19-24 (1991)
• [文献書誌] H.Miyake: "Artificial muscle based on the idea of a shape memory alloy sarcomere" Artif.Organs Today. 1. 295-301 (1991)
• [文献書誌] 三宅 仁: "内骨格型形状記憶合金人工筋肉マニピュレ-タの動的設計" 人工臓器. 21. (1992)