癌患者リンパ球を13日間T細胞増殖因子、recombinantILー2、可溶性自己腫瘍抗原を含む培養液にて増殖させたキラ-T細胞(cultured lymphocytes:CL)の自己腫瘍に対するキラ-活性測定系( ^<51>Cr放出試験)に患者新鮮リンパ球(fresh lymphocytes:FL)を添加する事により、FLとCLの抗腫瘍協調作用発現の条件を解析し、次の結果を得た。1.初回治療乳癌術後症例を対象としたプロトコ-ル研究(免疫化学療法と無治療とのランダマイズ研究)において、無治療群では9例中3例でFLがCLのキラ-活性を抑制したが、免疫化学療法(OK432とcyclophosphamide)群では抑制例はなく、7例中3例で増強がみられた。2.乳癌肝転移例(N=18)に対する免疫化学療法後のFLでは18例中6例で増強が、18例中7例で抑制が見られた。3.免疫化学療法前後でのFLの表面マ-カ-の変化では初回治療乳癌、乳癌肝転移両者においてCD8+CD11b+細胞とCD16+細胞の減少が見られた。4.自己腫瘍、他家腫瘍を用いた検討ではFLのCLのキラ-活性に対する抑制及び増強活性に部分的ではあるが、特異性を確認できた。5.CLのキラ-活性を増強、抑制するFLはいずれもプラスチック非付着分画にその活性を認め、さらにnegative selection法にて特に、CD8抗体処理FLはCLのキラ-活性を増強することが示された。6.さらに乳癌肝転移患者においてFLのキラ-活性増強、抑制作用と生存期間との関連では、肝再発後の生存期間は増強例で長い傾向を認めたが、治療開始後の生存期間では有意差を認めなかった。従って免疫化学療法によりFLのCLのキラ-活性に対する抑制作用を増強作用に転換することが可能であることが示されたが、今後の研究課題として様々の免疫療法剤、化学療法剤による免疫増強法を確立することが重要であり、これにより養子免疫療法の効果増強法の確立のみならず、抗腫瘍免疫機構の解明にも資する。
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