研究概要 |
今年度の研究として以下の検討を行った。 (1)実験的検討 雑種成犬を用いて、closed duodenal loop法により急性出血性膵炎を作成し、膵酵素阻害剤Nafamostat mesilateを腹腔動脈より持続動注したところ、同量を従来の点滴静注により投与した群にくらべて、膵の壊死範囲、膵組織中の膵酵素活性はいずれも低値であり、また、膵組織内の阻害剤の濃度は静注群の約5倍であった。次に、より重症度の高いモデルをNaーtaurocholateの膵管内注入により作成し、病態を検討した。膵炎作成直後より膵組織は著明な出血と壊死を呈し、血圧の低下を認めないにもかかわらず、膵組織の酸素分圧は約50%に低下し、さらに、血液の粘稠度も上昇した。これらの変化は、対照とした浮腫性膵炎(軽症)モデルにくらべて顕著であった。持続動注療法の効果については今後検討の予定である。 (2)臨床的検討 重症急性膵炎に対し、臨床的検討を行った。まず、出血壊死性膵炎10例に対し、FUT 120 mg/day(3日間)の持続動注を行ったが、激しい腹痛は短期間に消失し、臓器障害を含めた臨床症状の早期改善が認められた。また、WBC,CRPなどの血液生化学的パラメ-タ-の改善も認められた。感染を併発しない症例は膵の壊死部は仮性嚢胞を形成し、治癒となった。現在、用量、投与期間を変えた群(FUT 240 mg/day,5日間)の検討を行っているが、2例の壊死性膵炎に対する検討では、腎不全、DIC,呼吸不全の著明改善、膵の炎症の早期改善が認められており、今後、継続して検討を行ってゆく予定である。
|