研究概要 |
(1)C3H/He/SIC系5週齢雄性マウスの後肢足背にマウス腹水肝癌MH134の細胞浮遊液(5×10^5cells/mouse)を注入して、膝窩および腰部リンパ節の転移モデルを作成。転移を形成した膝窩リンパ節に(1)CHエタノ-ル(微粒子活性炭CH40と純エタ-ルを1:4の割合で混じたもの) (2)純エタノ-ル (3)生食をそれぞれ0.05ml注入し、4日後にマウスを屠殺して、膝窩および腰部リンパ節を摘出し、ホルマリン固定してHE染色による標本を作成し、組織学的に検索した。その結果、CHエタノ-ル注入群では膝窩リンパ節と腰部リンパ節の両方、純エタノ-ル注入群では膝窩リンパ節のみに広範囲の疑固壊死を認め、リンパ節転移巣が消失している所見を認めた。したがって、CHエタノ-ルを転移リンパ節を注入すると、注入した局所のリンパ節のみならず、遠隔リンパ節(腰部リンパ節)にも、組織学的治療効果が認められることが判明した。 (2)P388白血病細胞を用いて同様のリンパ節転移モデルを作成した。そして、上記と同じ治療群を作成し、治療後の生存期間を比較した。その結果、CHエタノ-ル注入群は他の2群に比べて有意に長く、治療効果を認めた。 (3)同じ治療群について、治療4日後に膝窩リンパ節と腰部リンパ節を摘出し、摘出したリンパ節をそれぞれ別個にペトリ皿上で約0.5mlの生理食塩水を加えてハサミで細切して細胞浮遊液とし、正常のレシピエントマウスの腹腔内に注入して、レシピエントマウスの生存期間を比較した。その結果、膝窩リンパ節を移植したマウスの平均生存期間はCHエタノ-ル群13.3日,純エタノ-ル群11.2日,生食群7.8日で、前二者に治療効果を認めた。腰部リンパ節を移植したマウスの平均生存期間はCHーエタノ-ル14.2日,純エタノ-ル13.6日,生食群9.7日で、前二者に治療効果を認めた。以上の結果から、CHエタノ-ルを転移リンパ節に注入する治療法は、注入局所のリンパ節と遠隔リンパ節の両方に治療効果のあることが判明した。
|