本研究の目的は治療困難な消化器癌のリンパ節転移に対する全く新しい治療法を開発することにある。平成4年度における研究ではCH-ETの効果をさらに高めるため微粒子活性炭CH40と純エタノールを1:4(v/v)の割合で混和したCH-ETにマイトマイシンCを250μg/mlの割合で混和したMMC-CH-ETを作成した。そして、マウス白血病細胞P388をBDF1マウスの左後肢足背皮下に移植したモデルで、P388移植後8日目に左膝窩リンパ節にMMC-CH-ETを0.1mlを注入してその4日後に腰部リンパ節を摘出し、細切組織遊液をrecipientマウスに移植して他の治療群と平均生存日数を比較した。その結果、MMC-CH-ETを注入した群の平均生存日数はMMC-CH群、MMC単独群、対照群などと比べて有意に長かった。これらの結果から、MMC-C-ETのリンパ節内注入療法は、消化器癌の切除不可能なリンパ節転移に対して効果が期待できる治療法であると考えられた。臨床応用は、切除不可能な大動脈周囲リンパ節転移を認めた胃癌の1症例(70歳、男性)に対して、術中大動脈周囲リンパ節にMMC-CH-ET12mlを注入したところCT検査による経過観察で、リンパ節転移の縮少と壊死を示す画像が得られた。
|