研究概要 |
本研究の目的は治療困難な消化器癌のリンパ節転移に対する全く新しい治療法を開発することにある。平成2年度および平成3年度における研究でCH3/HeSIC系雄性マウス(5週齢)の左後肢足背皮下に腹水肝癌MH134の細胞浮遊液(5*10^5cells/mouse)を移植し,腰部リンパ節の転移モデルを作製した。転移が成立したマウスの膝窩リンパ節内に,リンパ指向性の高い微粒子活性炭CH40のと強力な組織障害性のある純エタノールのを1:4(v/v)の割合で混和したCH-ETを0.05ml注入し,4日後に屠殺して同側の膝窩リンパ節および腰部リンパ節の重量を測定したところ著明な治療効果が認められ,組織学的にも著明な凝固壊死が認められた。平成4年度における研究ではCH-ETの効果をさらに高めるため微粒子活性炭CH40と純エタノールを1:4(v/v)の割合で混和したCH-ETにマイトマイシンCを250μg/mlの割合で混和したMMC-CH-ETを作成した。そして、マウス白血病細胞P388をBDF1マウスの左後肢足背皮下に移植したモデルで,P388移植後8日目に左膝窩リンパ節にMMC-CH-ETを0.1mlを注入してその4日後に腰部リンパ節を摘出し,細切組織浮遊液をrecipientマウスに移植して他の治療群と生存率を比較したところ,本治療法の生存率が他の治療法と比べて有意に良好であった。臨床応用は,切除不可能な大動脈周囲リンパ節転移を認めた胃癌1症例(70歳,男性)に対して,術中大動脈周囲リンパ節にMMC-CH-ET12mlを注入したところCT検査による経過観察で,リンパ節転移の縮少と壊死を示す画像が得られた。
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