不整脈の内心房細動は脳梗塞など種々の塞栓症の合併症や頻拍による心不全を発生する。新しい外科治療として右房隔離術の電気生理学的心機能的影響を調査するのが研究の目的である。 研究方法は雑種成犬を用い、体外循環下に原田らの方法に従い右房隔離術を行った。術前後に心外膜心電図、右房左房圧、左室収縮能を表わコンダクタンスカテ-テルによるEmaxを測定し術前後で比較した。 現在までの研究成果は、1.右房隔離術の手術手枝はほぼ確立され電気生理学的な成功率は初期の60%が現在では100%となった。2.右房隔離術後の心房調律を洞調律に同期された場合(atrial kickがある状態)に比較して、右房調律が徐脈または心房細動では右房左房圧において上昇傾向を示したが有意な差は認められなかった。また、その他の心血行態の指標においても有意差は認められなかった。3.右房隔離術後の心収縮能についてEmaxを主体に分析比較した。隔離された右心房が心房停止または極度の低頻度の収縮である場合は、比較的安定した圧容積曲線が得られ、右房隔離前の洞調律時のEmaxとの比較では有意差は認められなかった。しかし、隔離された右心房が心房細動の場合は安定した圧容積曲線が得られず、一定の心室拡張時間を有する心周期の圧容積曲線だけを選択しEmaxを求めた。この分析でも有意差を認めなかった。この結果から、右心房が隔離された場合の一回心拍出量は右心房のatrial kickにより心拍毎に変化するため圧容積曲線から求めるEmaxを求めにくいことが判明した。しかし、条件を一定にして得たデ-タから分析すると右房隔離術の左室収縮機能に与える影響は少なく、臨床に応用することが可能であると考えられる。この後の研究計画として、右房隔離術に左房隔離術を加えた両心房隔離術の電気生理学的、血行動態的影響、及び体外循環を使用しない手術法の開発を進める予定である。
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