心房細動の外科治療として心房隔離術が注目されている。心房細動の機序が多数のreentryであるならば、その維持には心房の一定の面積や心筋量が必要とされる。心房隔離術はその面積や量を減少させるとともに、隔離された心房内の異常な不整脈発生源は閉込められ、残された心臓は洞結節に支配されることとなる。この心房隔離術の臨床応用の安全性を調べるために、この手術の心血行動態への影響を検討した。1)術前に対する術後の心血行動態はEmaxを含めた各種指標において有意な低下を認めなかった。基礎的に心機能低下が存在しない例では、臨床への応用に対する安全性は確認された。2)人工心肺を使用した体外循環下での心房隔離術は容易であるが、体外循環を使用しないレーザーやcryosurgeryを利用した手術法は困難であることが明らかとなった。3)体外循環下に39歳の男性、53歳の女性の2例の心房中隔欠損症に心房中隔欠損閉鎖術、心房隔離術を一期的に実施した。心房隔離術前に心房マッピングを行い洞結節の位置を推定した後、この部位を避けて心房切開を行った。心房細動から手術までの期間はそれぞれ12か月、48か月であったが、術後直後から現在に至るまで洞調律を維持している。隔離された右心房は洞調律より遅い独立した調律であり、心房中隔および左心房は洞結節に支配されていることが術後の電気生理学的検査により明らかになった。心房細動の外科治療の有効性に関する結論は長期観察を持たなければならないが、この研究の要点である臨床応用の目的は達成できたと結論する。
|