昨年度にひき続き、生後4〜10週の雌Wistar ratを用いて、坐骨神経(末梢神経)の自家移植による顔面神経(末梢神経)の再生、および坐骨神経の切断後再縫合による再生実験を行った。一群は各ratを全身麻酔下に一側の坐骨神経を大腿部でとり出し(長さ約5mm)、更に一側の顔面神経を下顎部で切断し、その両端に坐骨神経のgraftを端々吻合して移植した。他群は、坐骨神経のみ切断しそのまま再縫合した。各ratは、1、2、4、6、8、10、12、24週飼育してから、それぞれ移植したgraftまたは再縫合部の末梢側をとり出して固定し、フェリシアン化カリウムにて前処置した後、エポン樹脂に色埋した超薄切片と、凍結割断レプリカを作製して電顕にて観察した。超薄切片では、Waller変性が全ての時期で認められた。4週以内のものでは、顔面神経へのgraftでリンパ球やマクロファ-ジの浸潤が比較的強く認められた。両群とも4週以後は次第にSchwann cellと無髄線維の増生が目立つ様になり、薄いmyelinと短いinternodeが再生していた。陽イオンチャンネル染色は、internode間(すなわち後のRanvier絞輪)に強く染まった。レプリカでは、各時期においてWaller変性をおこしたaxonとmyelin鞘のほかに、Schwann cellと同定されるBiingner bundleが多数認められたが、myelinを形成しないSchwann cellは、pinocytosisが認められないことが多く、同定困難であった。また、有髄線維のRanvier絞輪は、4週以後の両群において存在し、径10nm以上の粒子が多数存在していた。粒子の集積密度は200/μm^2程度で、大粒子はそのほぼ半分を占めていた。両群において、粒子密度に有意差を認めなかった。大粒子は、Naチャンネルそのものと推測されるが、今後Naチャンネルのモノクロ-ナル抗体が入手できれば、超薄切片におけるNaチャンネルは、特異的に同定できると考えられる。
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