我々の現在までの研究により脳死症例においても僅かながら脳血流が存在し、脳のある部分特に視床下部・下垂体前葉の機能の一部は保たれていることが明らかになった。今後、その部位が具体的にこれらの部位のどこであるのか、また脳死判定後どの位その機能が保たれているのかを流体力学的、内分泌学的及び放射線学的に検討する予定である。現在までに、脳死と判定された直後から3週間の症例に対して心停止依然に血中視床下部ホルモン・下垂体前葉ホルモンを測定した。また、静脈内に投与した視床下部ホルモンに対する下垂体前葉モモンンの反応性を測定した。その結果、脳死と判定されたこれらの症例においても視床下部及び下垂体前葉ホルモンは存在し、しかも下垂体前葉ホルモンはこれらの賦活化試験に反応した。また、経頭蓋骨的ドプラ-法にて検索すると、通常の脳血管撮影にていわゆるnonーfilling現象を示した症例においても血流の存在が確認され、流体力学的にも僅かな血流の存在が示唆された。さらに、心停止後病理解剖がなされた数症例を検索してみると、脳の一部は近停止直前まで機能していたと思われる部位が確認された。 今後はさらに症例をかさね、脳死判定がなされてからどの位の期間これらの細胞が生存し続けるのか、いつ完全な全脳死になるかを検討したいと考えている。また最近脳死判定の際に問題となっている脊髄反射にて説明がつかない異常運動に関しても症例を蓄積し、ビデオテ-プや筋電図等の手法を用いてその病態を解明したいと考えている。
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