1・脱神経筋における筋再生の発見:ラットを用いた実験モデルにより従来の脱神経性筋萎縮は筋再生である可能性が判明した。 2.脱神経筋の神経再支配:脱神経3ヵ月を過ぎると、例え神経再支配がなされても正常筋線維に回復するのは不可能であることが判明した。 3.神経血管柄付筋肉移植における筋再生:移植筋内では単なる筋萎縮ではなく筋線維の変性と再生が起こることが判明した。 4・臨床の神経麻痺患者の生検筋、神経の透過型電頚による観察:従来の報告と異なるのは臨床的に完全麻痺症状であっても、神経内には再生軸索を多く認めた。また、長期麻痺筋であっても、多数の未熟筋細胞が残存しており、これらは再生した筋管細胞と筋芽細胞であった。オリジナルな移植筋細胞は見られなかった。 5.得られた脱神経筋と神経血管柄付筋移植の理論の臨床応用:(1)中枢性顔面神経麻痺患者に対する麻痺後早期の血管柄付顔面交叉深腓骨神経移植術を行い、完全麻痺への移行を防止できた。この結果、新しい中枢性の顔面神経麻痺の外科的治療が開始される可能性がでた。(2)陳旧性神経麻痺患者に対する新しい一期的再建法である神経血管柄付大腿直筋移植術を行った結果、ほとんど全ての症例で運動神経が20cm長であっても、筋の可動性が得られることが判明した。この方法により、筋が既に失われた陳旧性顔面神経麻痺、陳旧性腕神経叢麻痺、広範な頭頚部癌切除後の顔面表情能の容易な再建が可能となった。 6.今後の展開:今回開発された新しい顔面神経麻痺の再建法においても神経過誤支配により個々の顔面表情筋の独立した運動ができないことが判明した。今後は単一の栄養血管で独立した運動機能を持つ複数の筋肉移植法の開発が必要である。
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