研究概要 |
ヒト線維肉腫細胞,ヒト骨肉腫細胞,ヒト前立腺癌細胞が強い基底膜浸潤能を有することをIn Vitro Invasion Assayで確認した。さらにヒト線維肉腫細胞HT1080 cellについては,type IV collagenaseが浸潤に関与していること,浸潤能はcyclic AMPアナログで抑制されることを確認した。 また,基底膜浸潤は1)腫瘍細胞の基底膜との接着,2)基底膜破壊、3)実質方向への迷入の3つのプロセスよりなるが,最初の接着の段階で基底膜内の糖蛋白であるlamininの4つのアミノ酸配列(YIGSR,PDSGR,RGD,IKVAV)が,HT1080 cellとの接着に関与していることを確認した。また,lamininだけでなく,基底膜の構築の軸となっているtypeIV collagen自身も、線維肉腫細胞HT1080 cellとの接着に関与していることを確認した。 現在の問題点は,lamininの4つの細胞接着領域が,どのような役割をもっているのか,即ち,次のプロセスである基底膜破壊や,迷入へのスイッチになるのは4つのうちどの領域との接着か,4つの接着領域はたがいにどのように関わり合っているかという点である。また,浸潤に関与する蛋白分解酵素は,type IV collagenase単一でなく,Stromelysin等の酵素も関与しているのではないかと思われ,アイット-プでラベルした基質の破壊,substrate gelを用いた実験などから検索を進める予定である。
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