研究課題/領域番号 |
02807143
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢島 直 東京大学, 医学部・(分), 助手 (20191108)
|
研究分担者 |
花岡 一雄 東京大学, 医学部, 教授 (80010403)
菅井 直介 東京大学, 医学部, 講師 (10010563)
|
キーワード | 薬物動態学 / 薬力学 / 非脱分極性筋弛緩薬 / 最小2乗法 / 筋弛緩モニタ- / 単収縮高 / ディジタルフィルタ / Sheinerのモデル |
研究概要 |
常用量の非脱分極性筋弛緩薬を投与後、筋弛緩モニタ-のデ-タをオンラインでコンピュ-タに取り込み、患者の薬物動態学的および薬力学的パラメ-タ(pharmacokineticーdynamic parameters)を推定するのに、精度がよくかつ簡便な方法を開発した。以下に示すように(1)作用発現時、(2)作用回復時に分けて各パラメ-タを推定する理論式を作成した。 筋弛緩薬の薬物動態学は次の2コンパ-トメントモデルに従い、 C(t)=Ae^<-αt>+Be^<-βt>(α>β)ーーーーーー(1) 薬力学はSheinerのモデルに従うと仮定した。すると筋弛緩投与後、時刻tでの単収縮高を推定する式として次式が導かれる。 log〔(l_0-l)/l〕=γlogδ+γlog{(ζ(e^<-αt>-e^<-k_<eo>t>)/(k_<eo>-α)+(e^<-βt>-e^<-k_<eo>t>)/(k_<eo>-β))/(ζ+1)}ーーーーーー(2) ここで、l_0はcontrol twitchの高さ、lは投与後t秒でのtwitchの高さ、γとk_<eo>とC^<55>_P50はpharmacodynamicsの定数である。また、ζ=A/B,σ=(k_<eo>・D)/(C^<55>_P50・Va)である。 (1)作用発現時:Xが十分小さいときにはe^<-X>≒1-Xが成り立つので、式(1)より log〔(l_0-l)/l〕=γlogδ+γlogtーーーーーー(3) が成り立つ。この式より、初回投与量Dと作用発現時間tとは反比例することが示唆される。実際、たとえばベクロニウムの95%作用発現時間は、初回投与量に反比例することが、ヒトの臨床デ-タで確認された。 (2)作用回復時間:時間tが十分に大きいときには (e^<-αt>-e^<-k_<eo>t>)/(k_<eo>-α)<<(e^<-βt>-e^<-k_<eo>t>)/(k_<eo>-β) (∵α>k_<eo>>β) が成り立つので、式(1)は次式のように変形される。 log〔(l_0-l)/l〕=γlogδ'-γβt+γlog(1-e^<-c・t>)ーーーーーー(4) ただし、 δ'=(k_<eo>・D)/(C^<55>_P50・V_d^<ext>・_c)、V_d^<ext>=(1+ζ)V_d、c=k_<eo>-βである。 最小2乗法を用いて、これらの式に筋弛緩モニタ-のデ-タをあてはめて求めたパラメ-タγ、β、k_<eo>などの値は、実際に血中濃度を測定して求めた値と良く一致していた。また、初回投与時のデ-タから、追加投与後の筋弛緩薬の薬理学的作用をよく推定することができた。 さらに、筋弛緩薬投与後の単収縮高の経時変化のデ-タから、雑音成分を除去するためのFIRディジタルフィルタを作成し、電気メスやその他の物理的外乱を取り除くプログラムを開発した。
|