当初予定していたパッチクランプ用機器が使用できなかったため、通常の電気生理学的機器を用いた。またマウス脳海馬標本でLTPを得ることが困難で、しかも申請3年間に対し1年間しか与えられなかったため、より神経細胞が大きく、学習・記憶実験に頻用されているアメフラシを対象とした。アメフラシの「サイホンーエラ-腹腔神経節」学習実験モデルシステムを用い、サイホンへの刺激に対する「エラ引っ込め反射」のhabituationを学習内容とした。揮発性麻酔薬には0.5及び1.0パ-セントのエンフルレンを人工海水にバブリングしたものを、腹腔神経節のみ潅流させた。 (結果)(1)腹腔神経節のエラ運動ニュ-ロンLDG_1にガラス電極を刺入し記録すると、自発発射頻度はエンフルレンにより著明に増加した。それに伴ない自発エラ運動(呼吸)も増加した。この時LDG_1の静止膜電位がわずかに脱分極シフトをおこした。(2)LDG_1に脱分極性電流を加え活動電位を発射させたときのエラ引っ込め反応は濃度依存的にエンフルレンの影響を受けたが、二通りの反応を示した。2/3の例では減弱、1/3の例では増強した。(3)エンフルレンはエラ引っ込め反射のhabituation(学習)パタンを変え、habituationを早める傾向にあったが今のところ例数が少なく結論をひかえたい。以上からエンフルレンはアメフラシ腹腹神経節のCNSコントロ-ルニュ-ロンに主に作用し、学習を促進する可能性示唆された。また現在マウスの学習実験にて、固定促進作用がGABAreceptorを介するかどうかをベンゾジアゼピン拮抗薬フルマゼニ-ルを用いて検討中である。
|