赤血球膜における蓚酸輸送速度、小腸上皮刷子縁膜を用いた蓚酸輸送系、蓚酸負荷試験について研究し、昨年度は以下の成果を得た。 1)赤血球膜における蓚酸輸送速度(oxalate influx rate):再発性蓚酸カルシウム尿路結石症患者10名および健常対照16名でのoxalate influx rateはそれぞれー0.76±0.12、ー1.0±0.19であり、再発性蓚酸カルシウム尿路結石症患者では統計学的に有意にoxalate influx rateは亢進していた(p<0.001). 2)ラット小腸上皮刷子縁膜小胞を用いた蓚酸輸送系の検討した結果ナトリウムの存在が蓚酸の膜小胞内への取り込みを刺激し、ナトリウム・蓚酸共輸送系の存在が示唆され、この蓚酸の輸送系は全小腸にわたって存在する可能性も考えられた. 3)尿路結石症の既往のない被検者5名において蓚酸ナトリウムと塩化ナトリウムを同時に経口負荷する場合と蓚酸ナトリウムのみを負荷場合の2つの場合について行った.負荷する蓚酸ナトリウムは4μmol/kgとし、塩化ナトリウムを負荷する場合はその量を1.2mmol/kgとした.負荷前の蓚酸・クレアチニン比を1として負荷後2時間、4時間での蓚酸・クレアチニン比を求めた.蓚酸ナトリウムのみの場合は負荷後2時間、4時間での蓚酸・クレアチニン比は負荷前とほとんど変化しないが、塩化ナトリウムを同時に経口負荷した場合は蓚酸・クレアチニン比は負荷前値に比べ約2倍以上の上昇を認めた.蓚酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを同時の負荷する負荷後2時間での蓚酸・クレアチニン比は負荷前のそれと比べ増加することから蓚酸の吸収部位は回腸より近位に存在する可能性が示唆され、また、ナトリウムの摂取により消化管からの蓚酸吸収は亢進することが示唆された.
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