【材料と方法】 妊娠120日〜130日(満期146日)の羊(サフォ-ク種)4頭、山羊(ザ-ネン種)3頭の計7頭を用い、胎児慢性生理状態を作成した。手術的に胎児直腸に蠕動運動を電気信号に変換するフォ-ス電極(スタ-メディカル社製)を設置、肛門より3腔を有する食道内圧力テ-テルを挿入留置し、胎児直腸内圧、胎児肛門管圧、子宮羊水腔圧のモニタ-を行い、臍帯に留置した絞扼バル-ンを用いて臍帯圧迫による急性胎児仮死状態下のおける胎便排出に関わる胎児消化管生理現象を観察した。 【結果】 手術後3〜4日経過し、手術侵襲より回復、慢性生理状態になったことを胎児動脈動脈血液ガス分析により確認した。(Ph:7.378 PO2:17.OPCO2:42.1 HCO3:24.3 BE:0.5 TCO2:25.5)臍帯絞扼40秒(絞扼圧240mmHg)、解放80秒を10回繰り返すことにより、分娩時の臍帯圧迫による急性胎児仮死状態モデルを作成した。臍帯を圧迫することにより胎児瞬時心拍数の低下及び回復(胎児一過性徐脈)を確認した。 同時にモニタ-した胎児直腸内圧は、基線より最高40mmHgの内圧上昇を認めた。子宮内圧には変化を認めなかった。胎児肛門管圧はデ-タ-を収集することが不可能であった。おそらく胎便により圧力テ-テルを閉塞したものと思われる。 一方、胎児直腸に設置した腸蠕動モニタ-電極は、安静時蠕動運動を認めたものの臍帯圧迫による胎児仮死状態においては蠕動運動をあらわす電圧の変化は観察されなかった。 以上より、臍帯圧迫による急性胎児仮死における胎便排出には、以前より言われてきた腸蠕動の亢進はおこらず、むしろ抑性されている所見が得られた。
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