本年度はコラ-ゲン膜両面細胞培養系の確立と、これを用いた卵胞壁構成細胞間の相互作用の機能形態学的研究を行い、以下の実績を得た。 1.透過性コラ-ゲン膜を用いた細胞培養系の確立:2種類の異なる機能を持つ細胞の機能相関の研究には、物質透過性をもつ膜の両面に両細胞が培養されるシステムの確立が重要である。当該研究者はこのような細胞培養系システムの確立に成功し、このシステムでは細胞の20日間以上の培養が可能であり、しかも2種の細胞の機能と形態を個別に把握できることを明らかにした。 2.顆粒膜ー莢膜細胞相互作用の細胞形態、ホルモン産生能、増殖能に及ぼす影響の検討:確立された細胞培養システムを用いて、卵胞壁を構成する2種の細胞である顆粒膜細胞と莢膜細胞の相互作用を機能・形態学的に検討した。単独に培養されたウシ顆粒膜・莢膜細胞と、cocultureされた顆粒膜・莢膜細胞の形態、ホルモン産生能、増殖能を比較観察し以下の結果を得た。(1)顆粒膜細胞は莢膜細胞とcocultureされることにより細胞は肥厚、増殖も著しく亢進し重層する細胞構築を有するようになる。しかし、細胞の持つProgesterone産生能は著明に低下する。(2)莢膜細胞は顆粒膜細胞とcocultureされることにより肥厚、細胞間隙も密となる。また増殖能、Androstenedione産生能共に著しく亢進する。 両面培養群の顆粒膜・莢膜細胞にみられる特徴は、これらの細胞が、単独に培養された細胞に比べ、生体卵胞壁に存在する細胞により近似することを示唆する。即ち、両細胞の相互作用は、卵胞壁が本来の細胞構築と機能を発現維持する為に不可欠の要素と考えられる。
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