研究概要 |
ウシ卵胞壁の顆粒膜細胞と莢膜細胞が細胞外成分を介して接するという細胞環境をin vitroで再現する培養系を開発し,前年度には両細胞間には互いの形態,増殖,ステロイド産生に影響を及ぼす情報交換が存在することを報告した。本年度は両細胞間のInteractionが顆粒膜・莢膜細胞におけるGonadotropinの作用を修飾するか否かを検討した。 I.莢膜細胞による顆粒膜細胞でのGonadotropin作用調節 単独に培養された顆粒膜細胞と,莢膜細胞とともに培養された顆粒膜細胞におけるFSH,FSH+LHの作用を比較した。共培養された顆粒膜細胞の増殖能はFSH刺激により亢進し,Progesterone産生能はLHにより亢進した。しかし単独に培養された顆粒膜細胞においてはFSHやLHのこういった作用は観察されなかった。 II.顆粒膜細胞による莢膜細胞でのGonadotropin作用調節 単独に培養された莢膜細胞と顆粒膜細胞とともに培養された莢膜細胞におけるLHの作用を比較した。共培養された莢膜細胞のAndrosteneーdione産生能はLHの作用により亢進したが,単独に培養された莢膜細胞においてはLHのこのような作用は観察されなかった。またいづれの細胞の増殖能ともにLHの影響を受けなかった。 以上より,顆粒膜ー莢膜細胞間の情報交換は両細胞におけるGonadotropinの作用をもまた修飾することが明かとなった。また,以上の事実は共培養された細胞は単独に培養された細胞に比べ生体発育卵胞壁細胞に近い特徴を備えることを示唆し,“両細胞の相互作用は卵胞壁が本来の細胞機能を発揮する為に不可欠の要素である"という昨年度に得た結論を支持するものである。
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