研究概要 |
生体卵胞壁はホルモン産生能以外にも卵の減数分裂をある時期まで抑制しこの間に卵に受精後に個体にまで育つ発育能を与えるという働きをもつ。卵胞内では卵は卵成熟抑制因子と称される物質により第一減数分裂の途上で成熟が抑止されている。卵成熟抑制因子は顆粒膜細胞から卵に移行する物質と考えられており,卵胞壁と卵との連絡が絶たれると卵成熟は直ちに再開する。そこで本年度は顆粒膜細胞のもつ卵成熟抑制作用を細胞間相互作用やゴナドトロピンがどのように修飾するかを検討した。 卵成熟が再開する時に最初にみられる変化は卵核胞と称される大きな核の消失(Germinal Vesicle Breakdown:GVBD)である。そこで卵胞より取り出した卵を直ちに単独に培養された顆粒膜細胞上,もしくは莢膜細胞と共に培養された顆粒膜細胞上に置き,GVBDの出現を時間を迫って観察した。顆粒膜細胞と卵との接着は数分で完了し,両面培養顆粒膜細胞上で培養された卵のGV消失は単独培養顆粒膜細胞上で培養された卵に比べ遅延した。即ち,莢膜細胞からのシグナルは顆粒膜細胞の卵成熟抑制作用の亢進をもたらすことが判明した。さらに莢膜細胞と共培養された顆粒膜細胞の卵成熟抑制作用はFSH刺激を受けると亢進するが,単独培養細胞ではこのような現象が観察されなかった。 以上,顆粒膜細胞の卵成熟抑制作用は莢膜細胞からのシグナルにより増強する。またFSHは莢膜細胞の影響下にある顆粒膜細胞の卵成熟抑止効果を増強することが明きらかとなった。
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