研究概要 |
我々は癌遺伝子、癌抑制遺伝子、および癌抗原の抗体レベル、mRNAレベルでの発現を婦人科悪性腫瘍とくに子宮頚癌について研究してきた。今年度はヒトビオチン化DNAプロ-ブを用いて活性型ras癌遺伝子をin situ hybridization法にて検出する方法をほぼ確立し、(麦倉・寒河江ら札幌医誌60,139,1991)この方法でも免疫組織化学と同様に、腫瘍の悪性化に伴ってその発現率が上昇していたことが確認された。また今年度よりras癌遺伝子の点突然変異をPCR法でも検討中である。さらに子宮頚癌についてはHPV16型プロ-ブを用いてdot blot法での検索を続けており、癌遺伝子発現との相互関係を検討しているが、いまだ症例数が少ない。 一方癌抑制遺伝子p53では、免疫組織化学的に子宮頚癌・卵巣癌での発現を抗p53抗体PAb1801を用い検討した(工藤ら血液・腫瘍科22,550,1991)が、変異型を認識する可能性が大きく、これまでのパラフィン切片でのdataは不正確なものと考えられる。そこで現在は過去3年前より集めている凍結切片での研究に切り替え、症例を追加を試みている。また変異型p53蛋白はheat shock protein 70(hsp70)と結合し癌化に関与している可能性が報告されている。我々はヒト癌細胞株、ヒト癌組織を用いて、FITC法・Western blot法・dot blot法で変異型p53とhsp70のmRNAと蛋白の発現を、また両蛋白の細胞内での結合性を調べ、ヒト癌の癌化過程でのp53とhsp70の関与を検討した。その結果ヒト細胞株に変異型p53ならびにhsp70の両蛋白の発現が認められ、この変異蛋白は細胞内でhsp70と結合することが示唆された。さらにこの結合がhsp70のどのsubfamilyと会合するかについてはhsc73と選択的に会合できるが、hsp72とは会合しないことが示された。以上のdataは第44回日本産科婦人科学会、第51回日本癌学会で発表予定である。
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