研究概要 |
本研究の目的は,組織培養や眼内潅流の実験によって眼圧調整機構を調べ,房水流出率を賦活することによって、眼圧を下降させる方法を模索することであった。 本研究の成果として 1、)房水中の存在している活性化酸素やアスコルビン酸が適出ウシ眼の房水流出率と毛様体筋の収縮を濃度依存性に変化させたこと。 2)その流出率は1,3ーbis(2ーcahloroethyl)ー1ーnitrosourea(BCNU)や3aminotrizole(3AT)によって著明に上昇するが、3ー4時間後に急激に減少してしまうこと。 3,)酸素毒については、流出率は流出路の細胞形態と相関のみられたこと。 4,)しかしながら、β_1刺激とβ_2刺激で必ずしも流出率と細胞骨格蛋白の変化(例,SーS結合)が一致していないことがわかった。 本研究の今後の問題点は 1)in vitroで得られた房水流出率の変化から、以上の物質によってヒトの房水流出率と眼圧が調節されている可能性があるがどうかを調べること。そのためには初期緑内障や患者の房水の検査が必要である。 2)房水流出率は、房水産生と異なり人為的にはかえられないというのが通説であるので、異った作用点をもつ代謝毒を利用して、いかなる物質代謝の経路が流出率を変化させるかをスクリ-ニングしたい。 我々は一貫して房水流出率の実験的研究をしてきた。米国国立眼研究所(NEI)の年次報告に「緑内障には房水流出抵抗の改善急務である。」と記されている。微々たるものであるが、昨年に比べ以上の点で研究は進歩した。
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