WGAーHRP順行性神経標識法によって、上顎臼歯の健常付着上皮内にHRPに標識された三叉神経線維(光顕レベルにて)や、HRP陽性顆粒を含んだ三叉神経終末(電顕レベル)を観察することができた。三叉神経終末はエナメル質および歯肉溝に非常に近接して存在していたのが特徴であった。さらに、たいていの三叉神経終末は、付着上皮にあたかも結合しているかのように近接していたが、これらの細胞間には、中翔の神経細胞間に存在するシナプス構造物はみられなかった。また、付着上皮内に存在する好中球も神経終末にきわめて近接していたのも特徴である所見である。これらの所見は、第95回日本解剖学会にて発表。論文として、J.Dental Reserchで印刷中である。 サブスタンスP抗体を用いて、健常付着上皮に免疫組織学的手法を行った結果、サブスタンスP陽性神経線糸の歯肉溝上皮および付着上皮全般への侵入が認められ、また少ないながらも歯肉溝に近接した付着上皮にも認められた。これらの結果は第96回日本解剖学会にて発表。論文としてはArchs.Oral Biolに投稿中である。 歯肉自然発症ラットを用いた場合、臼歯では歯肉炎は発症せず、前歯部(下顎切歯部唇側歯肉)のみに発症することが解った。それゆえ前歯部に焦点を合わせて、健常ラットと同じく、上記のこれらの実験を行った。 1)WGAーHRP順行性神経標識法 この方法では前歯部に神経線維を検索できなかった。それは前歯部の脱灰に約30日かかるから、EDTAの影響で活性が無くなるものと思われる。 2)SPおよびCGRP含有神経は歯肉炎自然発症ラットの下顎切歯部唇側歯肉の結合組織および上皮内に見られ、多くの血管にそって走行していた。また、歯槽骨部では、口腔粘膜側よりもエナメル質に面した側に多く、さらに骨に近接している神経も見られた。これらの神経は健常ラットに比較して、自然発症ラットに多く認められたのが特徴である。この結果は30回日本小児歯科学会大会総会(徳島)で発表予定。さらに論文として、Acta Histochem.Cytochem.で印刷中である。
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