本研究の目的は、マウス頭蓋冠より分離した骨芽細胞株MC3T3ーE1の各分化段階における細胞表面抗原に特異的なモノクロナ-ル抗体を作製し、これをマ-カ-として利用し、歯根膜細胞の分化を免疫組織化学的に解析しようとするものである。現在、基本的抗体作製手技のチェック、すなわち、免疫に用いる細胞の採取法およびその時期、融合させる細胞の密度、抗体のバイオアエッセイの方法、およびそれに用いる細胞、組織の種類等について検討を加えている。一方、上記作業を通じ、抗体の特異性およびそれを用いた組織化学的検索結果の説明のために、あらかじめ明確にしておかなければならない点が明かとなった。まず、in vivoでの陽性細胞の分化段階を正確に認職するために、免疫に用いた細胞の分化状況を把握しておく必要がある。このために、細胞を一定の培養日数毎に、電顕を用いて検索し、それぞれの細胞学的特徴、特に粗面小胞体やゴルジ野の発達、基質小胞の形成、アパタイト結晶の出現、細胞表面でのアルカリホスファタ-ゼ活性の有無について明らかにしつつある。次に、骨芽細胞に分化に影響を与える因子、なかでもサイトカインや破骨細胞との相互作用について注目し、これらを実験系に組み込むことによって、免疫組織化学による検索結果の解釈をより明快にしようと試みている。そのために、破骨細胞欠陥突然変異マウスでの破骨細胞の組織学的特徴を検討するとともに、造血因子(MーCSF)投与により破骨細胞が活性化された結果、骨芽細胞の分化、機能の活性化が生じることを明らかにした。この実験系は、得られた抗体のアッセイに極めて効果的であると考える。
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