研究概要 |
1.好中球の過酸化水素(H_2O_2)産生に対するヒスタチンの影響: モルモット腹腔からカゼイン刺激によって得た好中球は、種々の刺激剤(LPS、fMLP)によってH_2O_2を産生したが、刺激剤の存在しない場合にもH_2O_2の産生がみられた。この非刺激時のH_2O_2産生は温度依存性であり、4℃ではH_2O_2の産生はおこらないが、温度の上昇と共に増大し、37℃で最大に達した。しかし45℃ではH_2O_2産生は認められなかった。Ca^<2+>およびMg^<2+>はこのH_2O_2産生に必須でなかったが、Ca,Mgの非添加時にはH_2O_2産生は50%以下に減少した。また非刺激時には好中球は培養器底面に接着し、伸展した。このH_2O_2産生と接着性は微量のヒスタチン類によって濃度依存的に抑制された。ヒスタチン類のH_2O_2産生の50%抑制に必要な濃度はヒスタチン3と5はそれぞれ3及び5μMであり、ヒスタチン1は35μMであった。しかしヒスタチンは刺激剤によるH_2O_2産生に対しては抑制しなかった。ヒト末梢血から分離した好中球に関しても同様の結果が得られた。 2.ヒスタチンの唾液中における性状: ヒスタチン類は唾液中(pH7.0)で37℃に保温するとヒスタチン3と5は著明に分解されるがヒスタチン1の分解は微弱であった。pH6以下および8以上では分解はみられなかった。唾液中でヒスタチン3から5の生成もみられなかった。またこの分解は種々のプロテア-ゼ阻害剤によって抑制された。 唾液を分子量1万の限外濾過にかけると、濾過中にヒスタチン類は認められなかったので、ヒスタチン類は高分子の唾液成分と結合した状態で存在することが示唆された。 ヒスタチン類の唾液内濃度には個人差及び年齢差があったが、性差はなかった。その日内変動は個人的にバラツキが大きく、一定の規則性は認められなかった。
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