研究概要 |
1.ヒスタチンの分離、精製法: ヘパリンカラムを用いたアフィニティクロマトと高速液体クロマトを組み合わせた精製法を考案し、短時間に高収率に精製が可能になった(Archs Oral Biol.35,415,1990)。 2.ヒスタチンによる好中球のH_2O_2産生の抑制: ヒト及びモルモットの好中球が刺激剤の存在しない場合に細胞の接着と伸展を伴ってH_2O_2を産生することを見出した。この接着とH_2O_2産生はヒスタチン類によって著明に抑制された。そのIC_<50>はヒスタチン3と5は、それぞれ3及び5μMであり、ヒスタチン1は35μMであった。 3.ヒスタチンのヒスタミン遊離活性の必須構造の決定: ヒスタチンの肥満細胞からのヒスタチン遊離に必要なアミノ酸配列をプロテア-ゼ処理後のペプチド断片及び合成ペプチドから決定した。その結果、ペプチドM9;LysーArgーHisーHisーGlyーTyrーLys(or Arg)ーArgーLysがヒスタチン類に共通に存在するヒスタミン遊離作用に必要な最小構造であった。 4.ヒスタチン定量法の開発と唾液中における性状: 酸性メタノ-ル抽出とODSーHカラムを用いた高速液体クロマト法によって唾液中のヒスタチン類を個別的に同時定量する方法を考案した。ヒト混合唾液中の総ヒスタチンの濃度は8ー56μMの範囲で、バラツキは大きいが平均28μMであった。これらヒスタチン類は唾液中の高分子成分と結合した状態で存在していた。また唾液内濃度には年齢差があったが、性差はなかった。ヒスタチンの唾液内分泌の日内変動は認められなかった。
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