研究概要 |
本年度は、口腔内味蕾を支配する味覚神経の中で、軟口蓋味蕾を支配する大錐体神経からの応答のみを延髄孤束核から記録することを試みた。実験には雄成ハムスタ-(体重120ー140g)を用い、ウレタンで麻酔後、舌咽神経を両側性に切断し、鼓索神経には記録開始後に切断できるようにナイロンの細い糸をかけておいた。その後、小脳を除去し、2%ブリリアントブル-0.5M酢酸ナトリウム溶液を満たしたガラスマイクロピペットを本科研費で購入した電動マイクロマニピュレ-タ-で数ミクロン単位で延髄孤束核部に刺入した。延髄孤束核部を探すために、舌に100μA期間1秒間、2Hzの電気刺激を与えて、同期するニュ-ロンの存在する部位を探し、記録可能な単一ニュ-ロンを捉えた。次いで、0.1M NaCl,0.01M quininieーHCl,0.5M sucrose,0.01M HCl の各味覚刺激溶液を電磁バルブを用いた刺激装置で口腔内全域に刺激溶液が行き渡るように与えた。これらの刺激に対する応答を記録したのち、鼓索神経にかけておいた糸を引いて鼓索神経を両側性に切断し、その後同様に味覚刺激を与えて応答の記録を行なった。全ての記録が終了したのち、10μAで5分間通電してブリリアントブル-によるマ-キングを行なった。実験終了後直ちに環流固定して脳を取り出し、通法に従って凍結切片法により標本を作成して記録部位の同定を行なった。また、延髄孤束核の位置を明確に把握するために、鼓索神経末梢端にHRPを投与して、2〜3日経過後固定して通法に従って凍結切片法で標本を作成して光学顕微鏡で検索した。現在までのところ、大錐体神経が投射している孤束核ニュ-ロンは数個しか得られていないので、他の味覚神経投射ニュ-ロンとの味覚感受性の差異を抽出する所までは至っていないが、次年度も引き続き研究を続ける。
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