研究概要 |
歯周病の病態を,サイトカインネットワ-クにおける歯周組織線維芽細胞の役割から解析することを試みた。以下に得られた知見を列挙するとともに,今後の研究の展望を述べる。 1.サイトカインの歯肉線維芽細胞の機能への影響 1)ILー1βは供試細胞の細胞増殖,DNA合成およびコラ-ゲン合成を抑制した。TNFαはDNA合成および非コラ-ゲン蛋白合成を促進した。2)ILー1βおよびTNFαは供試細胞のPGE_2産生を促進した。3)ILー1βによるDNA合成の抑制効果は細胞周期や細胞密度,血清の添加濃度を変化させても影響を受けなかった。4)インドメサシンによりPGE_2合成を阻害した状態では,ILー1βは供試細胞のDNA合成や非コラ-ゲン蛋白合成をむしろ促進した。一方,TNFαではDNA合成およびコラ-ゲン,非コラ-ゲン蛋白合成がさらに促進された。 以上より,ILー1βおよびTNFαは供試細胞のPGE_2産生を誘導することにより,細胞増殖,DNA合成および基質合成を制御していることが示唆された。今後,ILー1βとTNFαの協同作用についても検討する予定である。 2.歯肉線維芽細胞が産生するサイトカインの検討 1)ILー1βおよびTNFαは供試細胞のILー8,ILー6,ILー1βのmRNAを速やかに発現させた。2)培養上清中にILー8およびILー6活性が認められた。ILー1活性は検出できなかった。 以上より,歯肉線維芽細胞はILー1βやTNFαの刺激により,ILー8,ILー6,ILー1βを産生することにより炎症反応に関与していることが示唆された。今後,さらにサイトカイン産生の調節機構やサイトカインレセプタ-の解析を進め,サイトカインネットワ-クにおける歯肉線維芽細胞の役割から,歯周病の病態解析を進める予定である。
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