研究概要 |
歯周病の発症と進行のサイトカインネットワ-クの中で,歯周組織線維芽細胞が果たす役割について検討した。以下に,得られた知見について列挙する。 1,歯肉線維芽細胞が産生するILー6の動態 1)ILー1βあるいはTNFαの刺激を受けた歯肉線維芽細胞はILー6mRNAを発現し,ILー6を分泌した。2)ILー6産生は細胞自らが産生するPGE_2によって調節を受けることが示された。3)ILー6は歯肉線維芽細胞のDNA合成およびコラ-ゲン合成に影響を及ぼさなかった。4)歯肉線維芽細胞のILー6レセプタ-のmRNA発現は検出されなかった。5)炎症歯肉においても線維芽細胞がILー6陽性細胞であることが確かめられた。以上の結果から,炎症歯肉において歯肉線維芽細胞はILー6産生細胞として歯周病の炎症反応の調節に関与することが示唆された。 2,歯根膜由来細胞の細胞機能に及ぼす増殖因子の影響 1)PDGF,FGF,EGF,InsulinおよびTGFβは,歯根膜由来細胞のDNA合成を促進した。また,FGFとInsulinあるいはTGFβ,EGFとInsulinあるいはTGFβを協同して作用させた場合,それぞれの因子を単独で作用させた場合よりDNA合成が促進された。2)InsulinおよびTGFβは歯根膜由来細胞のコラ-ゲン合成を促進的に作用した。3)TGFβのみが歯根膜由来細胞のアルカリフォスファタ-ゼ活性を上昇させた。以上の結果から,歯根膜由来細胞の増殖および分化を調節する増殖因子の中でTGFβがとりわけ重要な役割を果していることが示唆された。
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