研究概要 |
我々は、新しい完全合成無蛋白培地(PF86ー1およびPF88ー10)を開発し、現在までに5種類の口腔癌由来および1種類の外陰部由来の計6種類のヒト扁平上皮癌細胞株の長期継代培養を可能とした。この培地は、共にアミノ酸、ビタミン、無機塩類の他に核酸前駆物質及び少量の不飽和脂肪酸より構成され、ペプチドホルモンを含め、一切の蛋白成分を含んでいない。このためこの培地を用いたヒト扁平上皮癌細胞の無蛋白培養系では、培養上清中に含まれる蛋白成分はすべてヒト扁平上皮癌細胞の産生したものと考えられることができる。以上の特徴を踏まえて研究を行い、以下の成果を上げた。 1.口腔癌の大部分を占める扁平上皮癌由来細胞株の長期継代培養を支持することのできる新しい完全合成無蛋白培地(PF86ー1およびPF88ー10)を開発した。 2.6種類のヒト扁平上皮癌細胞が、何らかの生理性物質を産生しているか否かをresting BALB/3T3細胞のDNA合成を指標に検索した。その結果、これらすべてのヒト扁平上皮癌細胞がBALB/3T3のDNA合成促進物質をその培養上清中に分泌していることが明らかとなった。この中で、歯肉癌由来細胞Ca9ー22PFの産生しているものに関して、現在精製を進めている。 3.口腔癌の顎骨吸収機序を解明する目的で、マウス頭頂骨の器官培養系を用いて骨吸収促進物質の検索を行った。その結果、Ca9ー22PFの培養上清中の骨吸収促進物質として、PG E_2,ILー1 α,PDGFーAA,PTHrPが関与していることが示唆された。 口腔癌の特性を無蛋白培養系を用いてサイトカイン産生の面から研究することの重要性が示唆された。
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