研究概要 |
前年度においては,ヒト上皮成長因子受容体に対するモノクロ-ナル抗体(MoAb)を作製した。本年度はこれら抗体の解析とこれら抗体を用いた口腔癌治療への応用の可能性について検索を行った。 作製した2種類のモノクロ-ナル抗体のうち12ー93抗体(lgG_1)はEGFのEGFrへの結合を阻害しEGFrの蛋白を認識することが明らかとなった。一方10ー77抗体(1gM)はEGFの結合を阻害せずEGFrの表面糖鎖のうち血液型A型糖鎖を認識することが明らかとなった。 次にこれら抗体の口腔扁平上皮癌(SCC)ならびに唾液腺由来腺癌(SAC)の無血清培養下での増殖におよぼす影響を検索した。 その結果12ー93はSCC,SACの増殖に著明に抑制したが,10ー77抗体は何ら影響を示さなかった。 したがって中和抗体である12ー93は口腔癌治療に有用性が高いことが考えられた。 次に,12ー93抗体を用いて口腔正常組織,口腔癌組織におけるEGFrの発現を免疫組織学的に検索した結果,正常粘膜においては基底層の細胞膜に,唾液腺組織においては導管上皮細胞の細胞膜に発現を認めた。一方SCCにおいては癌真珠を除く癌胞巣すべての細胞膜に強い発現を認めた。したがって悪性度とEGFrの発現は正比例していると考えられた。 次にヌ-ドマウス移植に腔癌の増殖に対する12ー93の影響について検索した結果12ー93は移植SCC,SACの増殖を有意に抑制することが明らかとなった。 さらにLymphokine activated Killer(LAK)cellの細胞表面に12ー93抗体を結合させた抗体結合LAK細胞の口腔癌細胞に対する細胞障害活性を検索した結果,対照のLAK細胞と比較してMoAbーLAKは有意に高い細胞障害活性を有していた。 以上の結果から,ヒトEGFrに対するMoAbは口腔癌治療に有用性が高いことが考えられた。
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