研究概要 |
本研究では、Bacteroides gingivalisが歯周ポケット内で生息するために必要な鉄源として歯肉溝浸出液由来のトランスフェリンを利用している可能性を調べ、さらにB.gingivalisとトランスフェリンとの結合機構を明らかにすることにより、本菌のポケット内での増殖におけるトランスフェリンの役割を明らかにすることが目的である。トランスフェリンを種々の濃度に調整した培地にて、口腔由来のBacteroides種8株を培養し、分光光度計をもちいてその増殖曲線を求めたところ、B.gingivalis3株とB.denticola1株は増殖したが、B.intermedius,B.melaninogenicus,B.loescheiiではほとんど増殖がみられず、口腔由来のBacteroides種のなかでもトランスフェリンの利用に差があることが明らかとなった。さらに、B.gingivalis381株は、鉄約35%飽和のトランスフェリン添加培地で増殖したが、アポトランスフェリン添加培地、ジピリジルや塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄などの遊離の鉄イオンを添加した培地では増殖しなかった。また、B.gingivalisとトランスフェリンとの相互作用を調べるために、トランスフェリンーペルオキシダ-ゼ複合体を用いて菌体トランスフェリンとの結合性を調べた結果、B.gingivalisはトランスフェリンと特異的に結合することが示めされた。以上の結果より、口腔由来のBacteroidesのいくつかの菌種は、歯周ポケット内で鉄源として歯肉溝浸出液中に含まれているトランスフェリンを利用して増殖しうることが示唆された。
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