研究概要 |
人間を含めた哺乳類の成長発育過程においては,遺伝要因や環境要因のみならず母体要因も大切な役割を担っている。これら3つの要因の相対的役割の大きさを解明する目的で近交系マウスを用いて,マウス受精卵人工培養とマウス受精卵移植術などの実験体系を確立したので,その研究の進展状況や研究成果について以下に報告します。 5系統の近交系マウスを用いた受精卵の人工培養実験の結果より,2細胞期から胚盤胞後期まで人工培養下で培養された受精卵の生存率における遺伝力は、16でマウス受精卵の初期発育における遺伝要因の影響は小さいことを解明し,その研究成果は第41回西日本畜産学会(平成2年11月6日・佐賀大学)で発表した。また移植受精卵より発育した胎仔マウスの頭部を頭部X線規格写真撮影装置により観察した後,骨格染色標本を併せて作成した。このうち得られた頭部X線規格写真上に設定した計測点のXーY座標値を二次元座標入力システムにより入力し,顎顔面頭蓋の大きさを求めた。そして移植受精卵より発育した胎仔マウスの顎顔面頭蓋の大きさに対する母体効果の影響について,現在までのところ4系統のrecipientマウスを用いて分析したところ,各系統から生まれた仔マウスの顎顔面頭蓋の大きさには有意な系統間差が認められ,各親マウスはその子宮内環境の違いを通して仔マウスの顎顔面頭蓋の発育に有意な影響を与えていることを解明し,その研究成果は第7回ソフトウエア・カンフアレンス(平成3年3月8日・大阪科学技術センタ-)で発表した。 平成3年度は,平成2年度に引き続き骨格染色標本のうち下顎骨の大きさを画像入力装置により定量化・分析を行ない得られた研究成果について学会発表および論文発表を行ない報告書としてまとめる予定である。
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