研究概要 |
今日,種々のペプタイド系プロテア-ゼ阻害剤が発見され,それらの生物活性,作用機構などが次第に明らかになるにつれ,天然ペプタイドよりも有効なペプタイド系医薬品の開発が強く望まれている.通常ペプタイドはプロテア-ゼにより急速に失活し,経口投与が困難であり,安定性に欠けるなど問題のある場合が少なくない.この問題を解決すべく平成2年度は,すでに提出した研究計画・方法に従って研究を行ない,次の成果を得ることができた. 1)αーアミノ酸の窒素原子をBOC基で保護し,カルボキシル基をアルデヒド基に還元したのち,順次δーアミノーγオキシーα,βー不飽和エステルに導いた.このエステルをメシル化し,有機銅・三フッ化ホウ素複合系を作用したところ,一挙にαーアルキルーβ,γー不飽和のジペプチド・イソスタ-が高収率で得られ,旦つ光学純度も極めて高いことが判明した. 2)有機銅・ルイス酸複合系による上述の不斉転位反応は,ジエチル・エ-テル溶媒中では殆んど反応しないが,テトラヒドロフランを含む溶媒中では低温(ー78℃)でも5分以内に反応が完結し,目的とするイソステリック・ペプタイドが得られることを明らかにした. 3)α,βー不飽和エステルのγー位の脱離基について検討した.その結果,アセトキシ基でもよいが反応時間が長くなる.最適の脱離基として,メシルオキシ基であることも明らかにした. 4)有機銅・ルイス酸複合体はアルキル・リチウム又はグリニヤ-試薬の何れから合成してもよいが,基質の構造によってはグリニヤ-試薬由来の有機銅・ルイス酸複合体では従来の一般説とは逆の反応経路(synーS_N2')で反応が進行することも明らかにできた.
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