研究概要 |
[目的] 高等植物二次代謝の制御機構を分子レベルで理解するためには,二次代謝産物の生合成酵素遺伝子のクロ-ニングと植物へ再導入する実験が不可欠である.今回演者らは植物二次代謝の代表的な系である非タンパク性βー置換アラニン類生合成の鍵酵素システイン合成酵素(CSase)のcDNAクロ-ンをホウレンソウから単離し全塩基配列を決定した. [方法,結果] ホウレンソウ(Spinacia oleracea)の新鮮葉には,二種類のCSaseA,Bが存在する.そこで精製したCSaseAの4個のV8プロテア-ゼ分解フラグメントのアミノ酸配列を決定し,これを基にイノシンを含む合成DNAプロ-ブV812(50mer)とV822(56mer)を作製した.ホウレンソウ緑葉よりλgt10を用いて作製したcDNAライブラリ-をスクリ-ニングし,200,000クロ-ンから19個のポジティブなクロ-ンを単離した.サブクロ-ニングの後,約1.3kbのインサ-トを持つ2個のクロ-ンの全塩基配列を決定した.cDNAクロ-ンは325アミノ酸残基をコ-ドしていることが示され,ピリドキサ-ルリン酸を補酵素とする活性中心部位が予想された.また,大腸菌,サルモネラ菌のシステイン合成酵素遺伝子と約50%,ラット肝臓のヘムタンパクHー450と約40%のアミノ酸配列のホモロジ-が認められた.現在,異種生物での発現などを検討している.
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