小腸及び腎尿細管上皮細胞における薬物輸送担体の構造と機能に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02807200
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 乾 賢一 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (70034030)
• 研究分担者: 斎藤 秀之 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (40225727)
• キーワード: 小腸上皮細胞 / 腎尿細管上皮細胞 / 培養上皮細胞 / 輸送担体 / 経細胞輸送 / 有機カチオン / ジペプチド / プロトン共役輸送

研究概要

多孔性フィルタ-上に培養した腸上皮細胞(Cacoー2)並びに腎上皮細胞(LLCーPK_1)の単層シ-トを用い、小腸のH^+/アミノーβーラクタム抗生物質共輸送(吸収)、尿細管のH^+/有機カチオン逆輸送(分泌)などの輸送系を中心にして経細胞輸送機構の解析を進めた。またアフリカツメガエルの卵母細胞による外来mRNAの発現系についても検討を加えた。
1.培養腸上皮細胞Cacoー2による抗生物質セフラジン及び抗悪性腫瘍剤ベスタチン(両性イオン)の輸送:Cacoー2細胞シ-トを介したセフラジン及びベスタチンの輸送は方向選択的であり、吸収過程に対応する経細胞輸送活性を示した。更にこれらの輸送活性は種々のジペプチド共存によって顕著に阻害されること、側底膜透過にも担体輸送系の関与していること、頂側膜液pHに依存することなどが示された。従ってセフラジン及びベスタチンは、Cacoー2細胞の頂側膜H^+/ジペプチド共輸送系及び側底膜特殊輸送系に認識され経細輸送(吸収)されることが示唆された。
2.培養腎上皮細胞LLCーPK_1による有機カチオン輸送: テトラエチルアンモニウム(TEA)はLLCーPK_1細胞の側底膜側から濃縮的に蓄積され、一方向性に頂側膜側へ分泌されること、この経細胞輸送は頂側膜液のpHに依存することが示された。更に頂側膜を介したTEAの輸送に伴って細胞内pHの低下が観察され、H^+とTEAとの交換輸送が直接的に証明された。以上より、LLCーPK_1細胞の側底膜及び頂側膜には有機カチオン輸送系が局在し方向選択的な経細胞輸送能(分泌)を発現しいてること、この輸送は頂側膜H^+有機カチオン逆輸送系によって調節されていることが示唆された。
3.アフリカツメガエルの卵母細胞による外来mRNAの発現: Cacoー2細胞から抽出・精製したmRNAを卵母細胞に注入し、一定期間培養後ベスタチン輸送を測定したところ、H^+勾配依存性のジペプチド輸送活性を発現することが示された。

研究成果

• [文献書誌] A.Takayama: "Transport of cyclosporin A in kidney epithelial cell line(LLCーPK_1)." J.Pharmacol.Exp.Ther.257. 200-204 (1991)
• [文献書誌] Y.Tomita: "Transport mechanisms of bastatin in intestinal and renal brushーborder membranes." J.Pharmacobioーdyn.14. S-60 (1991)
• [文献書誌] T.Katsura: "Transーstimulation effect on H^+ーorganic cation antiport system in rat renal brushーborder membranes." Am.J.Physiol.261. F774-F778 (1991)
• [文献書誌] H.Saito: "Transcellular transport of organic cation across monolayers of kidney epithelial cell line LLCーPK_1." Am.J.Physiol.262. C59-C66 (1992)
• [文献書誌] K.Inui: "Transepithelial transport of oral cephalosporins by monolayers of intestinal epithelial cell line Cacoー2:Specific transport systems in apical and basolateral membranes." J.Pharmacol.Exp.Ther.261. (1992)
• [文献書誌] K.Inui: "H^+Coupled active transport of bestatin via the dipeptide transport system in rabbit intestinal brushーborder membranes" J.Pharmacol.Exp.Ther.(1992)
• [文献書誌] K.Inui: "Nephrology" SpringerーVerlag,Tokyo, 1748 (1991)
• [文献書誌] 乾 賢一: "最新生物薬剤学" 南江堂, 351 (1991)