研究概要 |
細胞情報伝達系の一つであるアデニレ-トシクラ-ゼ系に介在する抑制性のG蛋白質(Gi)をモノ(ADPーリボシル)化する酵素,ADPーリボシルトランスフェラ-ゼCとそれを分解する酵素ADPーリボ-スグリコヒドロラ-ゼCを種々の動物細胞より見出し精製を行なった。これらの酵素の生理的役割を理解する一環として,ヒト血小板膜に存在するアデニレ-トシクラ-ゼ系の調節について検討を行なった。 ADPーリボシルトランスフェラ-ゼCによりGiをモノ(ADPーリボシル)化すると,α_2ーアドレナリン受容体を介するエピネフリンのアデニレ-トシクラ-ゼの抑制作用が抑制された。この抑制効果はGiのモノ(ADPーリボシル)化の程度とよく相関していた。また,この効果はADPーリボシルトランスフェラ-ゼCの阻害剤であるニコチンアシドの添加により阻害された。一方,Giに結合したモノ(ADPーリボ-ス)をADPーリボ-スグリコヒドロラ-ゼCにより水解除去すると,エピネフリンのアデニレ-トシクラ-ゼ抑制活性が回復した。この回復の度合はモノ(ADPーリボ-ス)の除去の程度に比列していた。また,ADPーリボ-スグリコヒドロラ-ゼCの阻害剤であるADPーリボ-スの添加により,エピネフリンの抑制活性の回復は阻害された。 以上の結果より,ADPーリボシルトランスフェラ-ゼCとADPーリボ-スグリコヒドロラ-ゼCは,Giを可逆的にモノ(ADPーリボシル)化することによってアデニレ-トシクラ-ゼ抑制系を調節していることが示唆された。
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