研究概要 |
ヒト血小板の細胞質画分より3種のモノ(ADPーリボシル)トランスフェラ-ゼAを精製した。そのうちの一つ,トランスフェラ-ゼAIと血小板膜を〔 ^<32>P〕NAD^+の存在下にインキュ-ベ-トした後,SDS電気泳動とオ-トラジオグラフィ-により標的蛋白質を分析したところ,分子量45Kの蛋白質に特異的に放射能が取り込まれた。この放射性をホスホジエステラ-ゼで分解すると,5'ーAMPの位置に放射能が回収された。また,中性ヒドロキシルアミンで処理すると蛋白質との結合部位が切断されることより,放射性物質はアルギニン残基に結合していることが示された。この反応はあらかじめコレラ毒素と非放射性NAD^+の存在下にプレインキュベ-ションにした膜においては見られなかった。これらの結果より,AIはGsのαサブユニットのアルギニン残基をモノ(ADPーリボシル)化することが示された。 アデニレ-トシクラ-ゼ系の調節におけるトランスフェラ-ゼAIの役割について血小板膜を用いて調べた。ヒト血小板膜をトランスフェラ-ゼAIとNAD^+でインキュベ-トすると,Gaαのモノ(ADP-リボシル)化に伴いアデニレ-トシクラ-ゼ活性が2〜3倍に上昇した。この活性化はプロスタグランジン(PG)E_1の添加によりさらに促進された。このメカニズムは以下のように考えられる。PGEIの作用により解離したGsαがAIによりモノ(ADPーリボシル)化される。これによってGaαのGTPア-ゼ活性が抑制され,βγとの再結合が抑制される。その結果,活性型のGsαーGTPの寿命が長く保たれる。したがって,トランスフェラ-ゼAIはGsαのモノ(ADPーリボシル)化を介してアデニレ-ドシクラ-ゼ活性を促進的に調節しているものと考えられる。
|