研究概要 |
血管新生機序の検討は家兎耳介をあけた小孔に透明窓をとりつけ、その透明窓内に新生してくる微小循環網を用いて行った。本年度は透明窓内に現われてくる微小循環網の血流を観察するためのシステム(本研究費補助金で購入した、ビデオコ-ダ-,ビデオデジタルタイマ-,モニタ-テレビのほか現有するテレビカメラから構成されている)の設置を行った。このシステムによる血流観察と,免疫組織化学的ならびに電子顕微鏡による形態学的検討を行い,以下に述べる事が明らかになった。1.血管新生がさかんな部位で,細胞間マトリックスは主にフィブリンから構成されていることが,免疫組織化学と電子顕微鏡による観察から明らかになった(これは既存血管からフィブリノ-ゲンが組織内へ流出しフィブリンに変化したと考えられる)。2.フィブリンマトリックスの充実期間は短かく(2ー3日程度),その後線維芽細胞の出現とともにマトリックスの主成分はコラ-ゲンになっていく。3.透明窓内にフィブリン溶解酵素のプラスミノ-ゲンを活性化する為,ウロキナ-ゼを連続的に透明窓内に注入すると血管新生の抑制が認められた。4.透明窓内に血流が現われる初期の段階での血管で,一部内皮細胞が欠落している部位が認められた。そしてその欠落部位での壁は,フィブリンと考えられるマトリックスから形成されている。以上の結果から本研究の目的である「血管新生部位でのフィブリンによる細胞間マトリックス形成が血管が新生するための必須要素である」ことはほぼ正しい作業仮説であることが確認された。ただし(1)フィブリンによるマトリックス形成,(2)血流の出現,(3)血管内皮細胞による管腔形成などの事象がどのような時間的経過を経て現われてくるか,などの細部にわたる点については,今後明らかにすべき課題として残っている。
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